『生活考察』編集日記

辻本力。ライター・編集者。『生活考察』編集人。お仕事の依頼は chikarat79@gmail.com まで。

良い、とうか好きな、居酒屋の条件とはなんだろうか。

辞書で引いてみれば、居酒屋は「店先で酒を飲ませる酒屋」「安く酒を飲ませる店」とある。
ただし、「好きな」となると、「安い」というような、コストパフォーマンス的な点以外に、「雰囲気」が重要になってくる(という考えに反対される向きはないだろう)。
「雰囲気」は、お店の方の立ち居振る舞いや料理の味はもちろんのこと、それによって引き寄せられる客のタイプやそこで話される話題であったり声のボリューム等々、それら不可分な要素の集合である。
もちろん、安くて旨いが腰を落ち着けて飲むところではない、サクっと飲んで出る店というのもあるし、安くて旨いがサービスはほぼ期待できない、そんな店だってある。
つまりは様々な要素のバランスで(そして、用途によって)、好きな店、自分に合う店、思わずちょくちょく通ってしまう店が決まってくる。
で、そのバランスとは、やはりつまるところお店が醸す「雰囲気」とイコールであり、それは「人柄」によってつくられるものである。
古本について文章を書かれている林哲夫さんが「エッセイは、結局人柄なのだ」と書かれていたが、それをもじらせていただくなら、居酒屋も結局、(お店の方の)人柄なのだ、と思う。
さて、先日行った店での断られ方がなんだか感じ悪く、居酒屋についてこんなことを書いた次第。
何故か無言で、そして何故か笑いながら「入れないよ」を表現する様が、なんというか馬鹿にしているような感じがしたのだった。
その笑い方は、少なくとも「ごめんね、入れなくて」というようなニュアンスはみじんもなく、やっぱり馬鹿にしているとしか感じられなかった(人柄うんぬん以前の問題だ。店のほんの数歩しか足を踏み入れていない段階でなんだから)。
そういえば、以前その店に行った際、会社員の団体客のワイ談に辟易させられたことを思い出した、しかもすごい大声で(そんなことを忘れて、また入ろうとした私も私だが)。
なにはともあれ、その後、居酒屋難民として流れ流れてたどり着いた、前から行きたいと思っていた水戸駅南のお店「田吾作」がとてもいい店だったから、不愉快な思いは払拭された。
アジの刺身が脂が乗ってて、口の中で溶ける。
ホタルイカの沖漬けも旨いし、西京焼きも素晴らしい。
そしてもちろん、「雰囲気」もよかったのだ。


斎藤環・著『文学の断層』読了。
「物語」の送受信に関する記述などが、個人的にいま関心のある事柄だったので、興味深く読んだ。


そして、栗原裕一郎・著『〈盗作の〉文学史』を読み出す。
日本における著作権法って、明治時代に成立したんだ。
仕事上では著作権使用申請とかしているくせに、恥ずかしながら、このへんのことはほぼ無知に等しい。
と、ほぼ同時に、河出から出ている世界文学全集の最新刊、フォークナーの『アブサロム! アブサロム!』も読みだす。
フォークナーはじつは初めて読む。
それにしても、どちらもたいへんなボリュームである。
その他、立て続けに出た柴田元幸さんの『Monkey Business』2号目、佐々木敦さんの『エクス・ポ』4号目、リトルモア刊の『真夜中』2号目、そしてユリイカ『特集・スピルバーグ』等々、雑誌をつまみ読み中。


あ、シャマランの新作『ハプニング』にも行かねば。
いまのところ、予備知識はいっさい遮断中。


〈盗作〉の文学史

〈盗作〉の文学史

〈盗作〉の文学史

アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)

アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)

アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)