『生活考察』編集日記

辻本力。ライター・編集者。『生活考察』編集人。お仕事の依頼は chikarat79@gmail.com まで。

メシ喰うな! されど…

これを読んでくれているわずかな皆様へ、明けましておめでとうございます。
更新せぬまま約1か月が経過。
正月の残り香もすっかり消え果てた今頃「明けまして…」もへったくれもありませんが。


新年そうそう胃に風邪菌が入り、9度を超す高熱に見舞われる。
胃をやられると、酒が飲めないどころの話じゃなくて、何も食べられない。
で、食べられないとなると俄然気になってくるのが「ぜったいに食べてはいけないもの」の類。
テレビをつければラーメン特集に見入り、堺正章が海老チリをつくっていればやはり見入り…と、頭の中は(脂っこい)食べ物でパンパン(ただし、胃は痛いし、腹は下っている)。
そんな折、ダメ押しのように読み始めてしまったのが、佐藤和歌子・著『悶々ホルモン』(『間取りの手帖』もユニークな本だった)。
これがじつに面白い、でも、いまの自分にとってはじつにうらめしい本なのだ。
秀逸な食のエッセイは、読み手に行動を促す(例えば、平松洋子のエッセイなんかはまさにそうだ)。
でも、今の自分にとって、「読んでいたら食べたくなった/つくりたくなった」という反応は自由だが、行動は制限されている(医者の命により)。
医者曰く「『おかゆくらい食べなきゃ』なんて思うかも知れないけど、とにかく何も食べずに胃を休めるように」とのこと。
だけどねぇ、もう頭の中がシロ、ハツ、レバー等々の焼けた匂い(の記憶)でいっぱいなのです。
治ったら食べるぞ、食べてやる、腹いっぱい、必ず…と口から小さく洩れる恨み節。
いずれにしても、読む本を間違ったことだけは確か。
こんなときこそ、種村季弘の『食物漫遊記』(食べたいけど食べられない、とにかく食事にありつけないエピソードばかりを綴ったエッセイ集)を読んでいるんだったよ。


※現在すでに完治。
お酒も徐々に飲めるようになってきました。
海老チリもホルモンも食べました。