『生活考察』編集日記

辻本力。ライター・編集者。『生活考察』編集人。お仕事の依頼は chikarat79@gmail.com まで。

健康問題&川端康成『片腕』

ちと忙しかったこともあり、更新が滞っていた。
っていっても、いつもさしたることを書いているわけでもないのだけど。
しかし、10日間連続出勤はさすがに疲れた。
情けないが、疲れが原因で、蕁麻疹が出てきた。
医者に行ったところ、あなたは蕁麻疹体質ですね、と言われた。
確かに、疲れてくると、顔に虫刺されのような膨らみが出ることがこれまでままあった。
いつもは顔のみだったのだが、今回は上半身全体に。
ようやくおさまってきたところ。
酒を禁じられなかったのは不幸中の幸いとでもいうところか。


上記のようなこともあり、健康に思いを馳せざるを得なかった(月末には健康診断も控えている)。
そんなわけで、体重計を買ってみた。
体脂肪やら基礎代謝なども出るOMRON社のもの。
値段と性能から選んだ。
一時は体重50キロ切るか切らないかというところまでそぎ落とした贅肉も、すっかり元通り。
「メタボ予備軍」という言葉が耳に痛い。
で、買った体重計に乗ったところ・・・予想以上の数値をたたき出しやがったのである。
これはあまりにあんまりだ・・・と、昔の幻想に別れを告げることを決意。
といっても、気を使うことはするだろうが、ことさら食事制限などはせず、以前のように筋トレをきちんとすることにした。
現在6日目、まだ成果は現れぬが、以前成果を上げたメニューを再現しているので、しばらく経てばそれなりの効果を期待できるだろう。
とりあえず、最初の筋肉痛の日々はようやく脱出。
ま、これからですかね。
季節は秋、食の誘惑も多いが、ほどほどに。


秋の夜はやはり読書か。
パラパラと読んでいた久世光彦・著『美の死 ぼくの感傷的読書』(ちくま文庫)で最初に取り上げられていた川端康成の『片腕』(新潮社文庫『眠れる美女』に収録)を読む。
あ、これはネット上でも読めるのね。
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/novel/kawabatayasunari.html


「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。そして右腕を肩からはずすと、それを左手に持って私の膝に置いた。


たまらん。
若い女から借り受けた「片腕」と一晩をともにする老人。
母体から離れた「片腕」は、母体の清純さからも開放され、老人を翻弄する。


「自分……? 自分てなんだ。自分はどこにあるの?」
「自分は遠くにあるの。」と娘の片腕はなぐさめの歌のように、「遠くの自分をもとめて、人間は歩いてゆくのよ。」
「行き着けるの?」
「自分は遠くにあるのよ。」娘の腕はくりかえした。


過去の自分との距離は、老人が自分の腕と付け替えた若い女の「片腕」に戦慄を覚え拒絶せずにはおられなかったように、すでに縮めることは叶わないのかもしれない。
できることといえば、その指先を吸うことくらいか。


美の死―ぼくの感傷的読書 (ちくま文庫)

美の死―ぼくの感傷的読書 (ちくま文庫)

眠れる美女 (新潮文庫)

眠れる美女 (新潮文庫)


とか書いていたが、突如、三浦和義の自殺を知り衝撃を受ける。
こんな形で幕引きとなったか・・・